夏休みの初日、大型書店で5冊ほどビジネス系書籍を買った。

稲盛和夫(著)『心。』は、今年「盛和塾」を閉塾させ、いよいよ晩年を迎えるにあたって、人生の後輩たちに伝え残したいことを集大成として書き上げた本だと思う。

ただ、ご自身のフィロソフィーが人生通じて一貫しているので、これまでの著書で語られてきたことばかりではあるが。

『売り上げを減らそう』中村朱美(著)は、なかなか面白かった。

京都にある佰食屋(ひゃくしょくや)という小さなステーキ丼専門店の経営の話だが、飲食店経営のあらゆる難問(長時間労働、人手確保が困難、安月給、客数の波が大きく食材ロスが多い)を、まったくの素人夫婦が逆転の発想で、1日百食限定のランチ営業に絞ることですべての問題解決をする話。

午前11時から営業開始して百食をし終えたら当日の営業は終了。

百食売れなくても14時半には店を閉める。= MAX3時間半営業。

店員は9時出勤で仕込みを始め、遅くとも17時45分には帰る。

つまり、営業時間が短いからと言って給与が安いわけではない。

詳しくは書籍を読んでいただくとして、以下、感じたこと。

普通で考えれば、営業時間に関係なく家賃も人件費も固定費として同じであるなら、一食でも多く売って、できる限り営業時間を長くしたほうが良いと誰もが考える。どう考えても、同じ固定費なら1円でも多く売る方が儲かるに決まってる。

” 普通で考えれば皆そう考える ” というのがキモだが。

飲食店経営の大多数は、そういう発想をして上手くいってないのだから、赤の他人事としてみれば、すでに数千、数万の人々が身銭を切って「上手くいかない!」って事を実証してきたのに、何でまた、あとから参入して同じことやるの?と滑稽にすら見える。

それでもやる場合、唯一のよりどころである「この商品は全然違うし、全精力をかけてやるつもりだから、俺は彼らと違う!」と言うのも、誰もが思った “普通” の発想であるわけだし。

この著者の「売り上げを減らそう」という発想は良いと思う。

が、だから自社も「売り上げを減らそう」とは思わない。

正確に言えば、「売上額」は高くても低くてもどうでもいいが、「労働生産性」は何があっても高くしていかなければならない。

労働生産性とは、P/L上でいうところの売上総利益÷社員数。

つまり、総粗利額が大きくて社員数が少ないのが最も強い形(永続的に儲かる = 関わる人々に大きく長期還元できる)であり、それをより少ない労働時間で上げる仕組みにするのが、経営というゲームの面白さだと思う。(もちろん、個人的な意見として)

本の話に戻るが、なぜ、彼女は「100食限定」というビジネスモデルにしたかというと、”そうすれば儲かるだろう” という発想ではなく、自分はどういうライフスタイルでありたいか、そして、普通人である自分が理想とするライフスタイルは、他の人が理想とするライフスタイルであるはず、という、ワークライフバランス重視。「普通に考える」でなく「自然に考える」に基づいた発想からだと感じた。

あぁ、またうっかり良い言葉がでちまったゎ俺。(^_-)-☆

「普通に考える」でなく「自然に考える」。だな。

「普通」は常識から発想。「自然」は摂理から。てな意味で。

自然に考えれば・・・

自分のして欲しいことは、相手がして欲しいこと。

社員が勤めたい会社は、自分が勤めたい会社。

自分が気づて欲しいことは、相手が気づいて欲しいこと。

それらも、「普通」に、「常識」で考えれば、役職がどうの、能力がどうの、性別が年齢が経験が・・・と、バイアスがかかる。

普通とか常識というのは、偏見の自己主張に他ならない。

すべてにおいて、自然に考えるのが大事なのではなかろうか。