朝7時。カーテン越しの柔らかい光を見ていると、静かな幸福感と、今と過去への感謝の気持ちに包まれる。
昨日、若い頃に勤めていた会社の社長が亡くなった。
その会社で勤めていた16年間のうち、No2としてごく身近で共に働いたのが12年間。
20代から30代半ばまで、一番、がむしゃらに仕事をし、成長の時期を共に過ごした人。古臭いが、青春そのものだった。
虫の知らせだったのか、つい1週間ほど前から想っていた。
“長年お会いしていないし、今なら大人として二人で食事しながら昔話を語れたらなぁ” と。
しかし、社長というのは本人が思う以上に下から距離のある存在で、思い付きでさっと電話できるほど軽い関係ではない。
さて、いつ電話しようか、と思っていた矢先、昨日、その社長から電話がかかってきたのだ。
携帯画面に表示された名前を見ながら第一声が頭に浮かぶ。
「なんて奇遇ですか!お電話しようと思っていたんです!」と。
しかし、電話の声は女性だった。不思議と一瞬で事態を理解した。
声の主は社長の娘さんで「今朝、急きょ父が亡くなりました」と。1週間前まで普通に仕事をしていたが、2~3日前に体調を崩して入院し、そのままあっと言う間の今朝、息を引き取られたとのこと。末期の肺がんだったらしい。
葬儀の場所日時だけ聞いて電話を置いた。
後悔。後悔しかない。
あらたてめて、今があるのは社長と出会ったからだと、感謝の気持ちを伝えることも、恩返もできぬまま。
想っていたのに、たった1本の電話もかけぬまま。
バカだバカだ俺はバカだ。こんな後悔はあるか。