3年前に「ゲノム編集に思うこと」という日記を書いた。
CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)と言われる、ゲノム配列の任意の場所をカットして、挿入、削除、置換できる画期的な遺伝子改変技術について。
iPS細胞は、任意の細胞に変化させられる原型だから「新規作成型」と言えるが、ゲノム編集は、まるでPCで文章を書くようなコピペ感覚で、最良の生物(人間を含む)を作れてしまうのだ。
それは、素晴らしい科学的発展であると同時に、倫理的な問題も大きくなっている。
「エイズや糖尿病を治せる」という事であれば、ある程度のコンセンサスは得られるだろうが、早々、肥満を治す、薄毛を治す、シワをなくす等々の欲を満たす方に走り、その先は、白い肌で目が青く背が高く記憶力が高い子供が欲しいと、デザイナーベビーとして我が子を “創作” する時代になる。すでに理論上可能で倫理上一時停止している段階だ。
それら倫理問題を管理抑制するのがFDAや世界の倫理委員会だが、ここにきて大きな問題になってきたのがバイオハッカーの出現。
倫理員会の管理外でさまざまな実験を自宅で行なっており、言ってしまえば、人間の好奇心にしたがって無秩序に生物実験が行われ始めているのだ。
もちろん、多くは趣味や興味として節度のある範囲で楽しむ人々ではあるが、PCの世界と同様、給料をもらって企業に勤めている技術者より、好奇心や探求心で活動している個人の方がレベルが高い。
バイオハッカーのカリスマ的存在 Ph.D ジョサイア・ゼイナー氏
そして今、日曜大工のようにバイオ研究を楽しむDIY BIOという分野が大きくなってきている。
実際、下記のサイトでは、たったの159ドルでCRISPR-Cas9のゲノム編集を行なえるセットが売られている。
一部配列を切り取り蛍光細胞を差し込むだけのようだが。
http://www.the-odin.com/diy-crispr-kit/
バイオの世界は、人間にとって都合のよい野菜や魚の編集にとどまらず、哺乳類として牛や豚はもちろん、見た目重視で筋肉隆々の犬などが登場している。(気持ち悪いので写真は掲載したくない)
数年前に、中国の研究者が臨床試験もなく人間に適用してバッシングを受けたが、おそらく、アンダーグランド的にはすでにデザイナーベビーが存在するのではないかと想像する。
そして、今一番気になるのが、iPS細胞より、ゲノム編集より、さらに危険なジーン・ドライブだ。
詳しくはTED講演で(https://youtu.be/OI_OhvOumT0)
通常は、DNAが子に継承される確率は50%以下とされるので上図左にあるように、世代が進むと淘汰されてしまうのだが(神の設計はほんと美しい)、なんと、ゲノム編集セット(カット位置情報、カットするためのたんぱく質、入れ替えるDNA情報)を含んだゲノム編集ができるようになったのだ。
つまり、次世代を自動編集する機能付きDNAが作れるので、上図右側のように世代が進むと急速に繁殖することになる。
これは不可逆なので、一度、このジーン・ドライブを使ってしまうと、その種が絶滅するまで自動的に淘汰が進む。(運よくその種で終わったとして)
もちろん、これはマラリア根絶のために特定の蚊を対象にするなど、目的があるのだが、果たして蚊で終わるだろうか。
人間にとって不要なものが次々と対象になり(ネズミは嫌い、カラスは怖いも含め)、どこかで生態系を壊してしまうだろう。
自分に不要なものを次々と排除すれば、最後には自分が排除されるのが世の常なのだが。
さらに、人間にとって不要な動植物に終わらず、ある人種にとって不要な人種などは考えられないだろうか。
ジーン・ドライブの研究にアメリカが約70億円の予算をつけたが、それが農務省でなく国防省から出ているのはなぜだろうか。
AIの分野ではシンギュラリティ(技術的特異点)と言われ、ジーンドライブ以降は人間の制御を越えてしまう領域に入る。
とにかく、これからゲノム関連の大きな話題が出てくるだろう。