『0ベース思考』S・レヴィット(著)という本を読んでいたら興味深い話があった。
News Week「世界が尊敬する日本人100人」に含まれ、アメリカでは有名らしいフードファイター(大食い競技)の小林尊氏の話。
貧乏な彼を見かねた交際相手が、賞金50万の大食い大会へ勝手に申し込む
大食い大会など考えた事もなかった彼は戸惑ったが研究を重ねて勝つための戦略を練る。
そして優勝した。
“大食いは体格でなく戦略で勝てる” と確信した彼は、NYで毎年開催される有名な世界大会「ホットドック早食い選手権」に照準を合わせ、戦略を練り準備を始める。
12分間で何本食べられるかの競技で、これまで40年間の最高記録は25本と1/8。そこで彼が出した記録が、なんと最高記録の2倍。50本だった。もちろんダントツの優勝となり以後6年間王者であり続ける。
彼はどう考え、25本の記録を少し上回る程度でなく2倍の50本を記録できたのか。
彼は過去のビデオを観ながら、優勝者を含め出場者は皆、詰め込み早食い型だと知る。
論理的かつ合理的に考えると、ソーセージとパンは密度がまったく違うので一緒に食べると非常に効率が悪いことに気付いた。
ソーセージは噛まずに飲み込めるので、パンから取り出し二つに折って飲み込み、パンは一度水に付けてからギュッと握って絞り、小型に圧縮して噛む。
他にも色々な発想で実験してExcelで秒数管理し、ビデオに撮って練習したらしい。
ライバルが漠然と「もっとたくさん食べるにはどうするか?」と考えている時、彼は「もっと食べやすくするにはどうするか?」を研究し実験し検証していた。
漠然とした問いを分解し「もっと食べやすくするには?」という小さな問いにする。
そうすればソーセージとパンの特性の違いが見えてきて、さらに「ソーセージを食べやすくするには?」「パンを食べやすくするには?」に細分化され、最適な解に辿り着く。
この分解的思考法は、ビジネス上でも非常に重要な思考法だと感じる。
たとえば、ダイレクトメール。
DMは5プロセスに分解され、各段階を乗り越えるための策が必要となる
- 事務員がゴミ箱に捨てず、社長の机に置いてくれるかどうかの壁
- 社長の机に置かれても、それを開封するかどうかの壁
- 開封したとしても、それを読むかどうかの壁
- 読んだとしても、FAX返信するかどうかの壁
- FAX返信したとしても、電話コンタクトに出るかどうかの壁
それぞれの段階を明確な質問に変えて、それぞれの解決策を考える必要がある。
- 事務員がこのDMを勝手に捨てられず、社長の机に置かざるを得ないためには?
→ 捨てるモノかどうか判断に迷うようなものにする。
→ 小さな立体物が入っていて、大事なモノかもしれないと思わせる。
→ 宅急便的なメール便で、社長が自ら資料を取り寄せたのだと感じさせる。
2. 社長がそれをゴミ箱ポイする事なく開封せざるを得ないものはどういうものか?
→ 1と同じようなもの
3. 開封してDMと気づいても、それでも読んでしまうにはどうするか?
→ パーソナルなレターであり、書いてる人の顔写真や手書きの箇所がある
→ ライティングの鉄則通り、ヘッダコピーから下へ引っ張る構成にする
→ レター、商品案内、レスポンス用紙、それぞれの役割を明確にする
4. 営業アプローチがあるかもしれないが、FAX返信をするにはどうするか?
→ 魅力的なオファーがある
→ 住所・社名・氏名まで記載されていて返信に手間がかからない
→ 自社のメリットになる可能性を感じる商品または情報がある
5. 営業からのフォロー電話に、社長が出るにはどうするか?
→ さきほど社長からFAXを頂いた件で伺いたい事がある、と受付を突破する
→ DMを読みFAX返信直後のコンタクトであれば基本的に応対可能な時である
→ 売込み電話はしない。各社に合った資料や情報を提供している姿勢を伝える
そして、資料送付についてのプロセスを分解するとどうなるだろうか。
- 早く社長の机に届けるにはどうするか
- 届いた資料をスグに開けるにはどうするか
- 資料を観てメリットをパッと理解させるにはどうするか
- 理解して次のアクションにつなげるにはどうするか
さらに、初面会から発注までのプロセスを分解するとどうなるだろうか。
- 初顔合わせから一瞬で決まる「好き嫌いの印象」を「好き」にするには
- 聞く姿勢、聞きたい姿勢、もっと聴かせてくれの姿勢にするにはどうするか
- 社長以外の同席者をも見方に付けるにはどうするか
- やってみたいと思わせるにはどうするか。やらない理由をなくすにはどうするか。
分解して、各段階の最適解をみつける思考法は、営業面だけに限らずあらゆる事に適応できる。さらにビジネスだけでなく私生活においても応用可能だと思う。
ちょっと書き疲れたので、この辺でドロンさせて頂きやす。