日記

立ち止り、歩いてきた道を振り返る

客先へ営業しに、電車を乗り継ぎ、汗だくになりながら永い線路沿いを歩いていた。

ふと気付く。「あれ?なんで俺、こんなに苦労して働いてるんだろう」って。

いやらしく思わないでほしいが、数学的には何もこんな苦労して働く必要がない。「だのになぜ 歯を食いしばり 君はゆくのか そんなにしてまで」と自問する。

梅雨時のアジサイがどこか懐かしくて立ち止り、煙草を一服つけて振り返ってみた。

前の会社を経営していた頃、俺は理想的で快適このうえない人生を生きていた。
何年も営業現場にでることもなく、仕事は経営の舵取りと100%責任を引受ける事。
ゆったり車で快適に通勤し、快適な職場、快適な仲間、快適な収入で完全満足だった。
そういう人生を目指し、人生に博打を打って会社を起し、やがて夢は現実になった。

だけど。実際そういう環境を手に入れて何年か経った時、またあの言葉が聞こえた。

「人生一回ポッキリ」

このままここにいたら、紆余曲折もあろうけど、快適に生きていけるのが十二分に想像できたし、人生のすべてが見通せた。そう、ずっと、一生安心して生きられる見通しを建てたいと願ったし手に入れていた。

でも、なんて俺は貪欲なのだ。人生のすべてが見通せたとき「つまらない」と思った。

人生は良くも悪くも、自分なりの見通しどおりになるものだ。そう信じている。
だから…。俺はこれから何年もかけ、既に知っている物語をなぞらなくてはならない。
紆余曲折、起承転結も織り込みずみで知ってるストーリーを生きなくてはならない。

「人生一回ポッキリ」の言葉がよみがえる。

・・・ダメだ!知ってる物語をなぞるような無駄な作業に人生を費やしたくない!

自分が想像もしなかった全く知らない物語を読みたい!生きたい!と思った。
自分の人生がどうなるかまったく想像できない?ワォ!なんてワクワクするんだろ。
そして、悩みぬいた末、会社を手放す決意をした。

私はカリスマタイプではないけど、社員に安心感を与える存在ではあったと思う。
この人が経営してたら何とかなる的な。だからきっと、俺が社長をやってる限り、このぬくもりから抜け出すには相当な勇気がいるはずだ。
なんとも傲慢な書き方だね。でも、そう思わすのが上手い、とは自覚してる。

心地よい場所は、諸刃の剣。人生に波風は立たないが、スゴイ人生にはならない。

十人十色だろうが、私の価値観では、生き延びるために生きてるなんて無意味だ。
だから激しく揺さぶってやりたかった。
当面どう思われようがいずれ、あれが転機で人生面白くなったと多くが言うはずと。

それは偽りない強い想いだ。
しかし。あとの半分、いやそれ以上だろう、第一の理由は、自分の人生だった。
自分の人生を激しく生きたい。若いうちに第2章3章と物語を展開させたかった。

ページをめくるとまったくの白紙。どんな話になるのかあらすじも用意されてない。

現実の人生でそういう状態になってみたかったんだ。 そして、本当に実行した。
今後何をするのか、一切決めず、一切想像もしないようにして会社を離れた。

あの日から、3年半経った。

そして、俺は今日、蒸し暑い夏の線路沿いを、汗だくになりながら歩き、自分のアイデアを形にした製品を持って、一件一件売りに回っている。

まったく想像してなかった、まさかの物語だよ。(笑)

でも本当に幸せなんだ。本当に素敵な人生だよ。

ある意味、また、すでに見通しを立ててしまってるのかもしれないけど、
このビジネスが紆余曲折しながらも成功することはすでに知っている。
だから今は、思いっきり汗だくになりながら営業したいんだ。
人生は想い出創りだからね。

「人生一回ポッキリ」 このたった一つの言葉に人生を賭けたい。

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