思考:思考の散歩

人間の尊厳

アルツハイマーを患っている母が徘徊中に転んで骨折し入院している。
大腿骨をプレートに入れ替える手術をしてわずか2週間ほどだが、家に帰りたがってスグにベッドや車椅子から立ち上がってしまう。
早朝4時半、看護士から 「人手が足りなくて、かまっていられない」 との電話。
わずか5時間前に通った道を、車で戻りながら考えていた。
手術をしリハビリをするのが仕事であって、痴呆の世話をするのは総合病院の仕事ではない。 母も誰かを困らせようと思ってやっているわけではない。
そう頭で理解しながらも、正直なところ私は腹を立てていた。看護士にも母にも。
説明しても理解できず、手をわずらわし続ける母。
早朝から携帯を鳴らし、どうにかしろと言う看護士。
それらに腹を立てる俺。
皆、自分は間違ってないと思っている。他がわかってないと思っている。
ただ、ひとつ言えるのは、自分を誤魔化していないのは母だけだということ。
私にも、看護士にも、どこか自分本位の後ろめたさがある。
考えてみると、母が拒んでいるものは人間として当たり前のことばかり。
鍵付きの介護服。見慣れない場所、人々。
50cm動くと服に着けたクリップが外れベルが鳴るセンサー。
ナースステーションからブラインド越し覗かれる部屋。
連れて帰ってと何度言っても聞いてくれない息子。
ジャバラ開閉のトイレが向かいにある扉のない個室で、朝6時頃になると何人もの人が入れ替わり立ち代りやって来て、他人の下痢や小便の音を聞かされ続ける。
吐き気でたまらなくなって、母を車椅子に乗せ裏の公園に飛び出た。
ふと言葉がよぎる。 人間の尊厳。
きっと母は正しい。
————–
公園には車椅子や点滴スタンドを引くパジャマ姿の高齢者が何人も居た。
外に出られる人以外、どれだけの人が病室で寝ているのだろうか。
後悔とともに病院のベッドで過ごしたくない。
何も成さずして気力体力を失いたくない。
まだまだ、やれること、やっておきたいは沢山ある。

先ず臨終の事を習うて後に他事を習うべし   日蓮

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