財務諸表は、会社という乗り物を安全に操縦するための計器と比喩表現できる。

さしずめ飛行機のコックピットは財務諸表経営によく似ている。

前面には売上高、原価、粗利、販管費、経常利益などの主計器が並び、天井や壁、手元には所狭しと人件費、消耗品費、交通費等々、細々とした計器が並んでいる。

また、メインディスプレイには、それらのデータが毎月どのように変化しているかが表示され、異変を発見し問題に対処して運行する。いかにも経営室だ。

ただ、私はこういう経営をやっていなかった。

だって、こんなに難解で、乗ってても楽しくない乗り物、私は興味がないから。目的は、計器の異常を常に監視して、前年比10%の前進を目指す感じか?

つまらない。

そもそも、計器が増えるほど、前方窓 (顧客や市場変化)の視界は小さくなり、乗客(従業員)の状況が、まったく見えなくなるものだ。ちなみに、コックピットという名の由来は、その名の通りコックのピット、つまり鶏を閉じ込める伏せ籠であり、窮屈な場所を表している。

もし、会社経営を飛行にたとえるなら、私はボーイングよりグライダーに乗りたい。

だって、こんなにも計器が少なくて、視界が広いのだから。

目的地に行くことより、飛行しているプロセスを乗客とともに楽しむ経営。

ワクワクを共有し、恐怖さえも共有して、その克服を全員の自信に変える。だから、計器は誰でもわかる最小限のものを共有すればいい。

売上、粗利、労働生産性(一人あたりの粗利)。
グライダーで言えば、速度、高度、傾斜度くらいか。

計器が多すぎると小さなことに目が行きやすく、結局、もっと大切な問題に手をつけていなかったりする。まぁ、グライダーも良いが、最も好きなのは、もちろんセーリングだ。

ヨットは、目的地に行くことでなく、プロセスを共に楽しむことが目的の乗り物。


風速、艇速、方位など計器はついているが、そんなものはまったく見なくても動く。
計器の値よりも大切なことは、体で風を感じ全方向視界で状況の変化をみること。

そして、最も大切なことは、乗っている人が楽しく充実した時間を過ごすこと。

ヨットの船長は一番後尾で操船し、クルーの動きや楽しんでいるかを見ている。たまには激しい動きで風に立ち向かい、たまにはゆったりと会話を楽しむ。乗客を飽きさせないようセーリングプランをするのも船長の役割だ。

機体が大きくなれば、重厚なコックピットが必要であろう。

たくさんの乗客を乗せ安全運行するには、100の計器の異変を早期に察知し、たえず修正をかけていく必要があるだろう。また、乗客も、機長に対して安全運行を期待するものである。

実際のところ、乗客の多くはお任せで安全運行が好きなのだ。

ただ、私はいつも思う。 そもそも、なんかズレてない?忘れてないだろうか?

たった一度の人生、A地点からB地点に何事もなく旅するのことが目的だったのだろうか。

もし、機体を動かすなら、私はボーイングよりグライダーより、大きめのヨットが良いな。